ケーススタディ・事例研究
ケーススタディ・事例研究
事例研究・ケーススタディとは?
事例研究(ケーススタディ)とは、特徴的な患者への看護実践をまとめ、その学びや気づきを共有する研究手法です。
個別の患者さんに対して行った実践・介入を振り返り、どのようなアセスメントや実施が有効だったかを明らかにし、今後同じような患者に活かせる知見(転用可能性)を得ることを目的としています。
「大変だったけれど、この看護がうまくいった。だから他の病棟や施設でも参考にしてほしい!」
そのような思いが、事例研究の原点です。
事例研究は、単なる「体験の振り返り」ではなく、根拠をもって実践を言語化し、看護の質を高めるための研究です。
事例研究の流れ
事例研究は以下の6ステップで進めていきます。
事例とテーマを決める
文献検索をする
「はじめに」を書く
「方法」を書く
「結果」を書く
「考察」を書く
1. 事例とテーマを決める
まずは、印象に残っている患者さんを思い浮かべてください。
例えば――
対応が難しかった患者さん
これまでの実践ではうまくいかなかったが、試行錯誤して改善できた患者さん
他の看護師にも共有したいほど学びが大きかったケース
現在入院中でも、すでに退院した患者さんでもOKです。
「この看護をまとめたら、他の人にも役立つかも」「自分の看護を振り返ってまとめてみたい」と感じる事例を選びましょう。
2. 文献検索をする
次に、事例の特徴を表すキーワードで論文を探します。
おすすめは以下のような無料データベースです。
CiNii (サイニー)
Google Scholar(グーグル・スカラー)
似たような事例研究や調査研究がないかを確認し、「はじめに」や「考察」を書く際の参考資料として活用します。
教科書や看護雑誌でもOKです。
3. 「はじめに」を書く
「はじめに」では、研究の背景と目的を明確にします。
なぜこの事例を取り上げたのか
この患者の特徴は何か
社会的背景(例:高齢化、独居、認知症の増加など)
文献や厚労省の統計データなどを引用して根拠を示す
はじめにの最後に、「本研究では、〇〇で退院困難であった患者の看護について振り返り検討した」or「 本研究では、〇〇で退院困難であった患者の看護について報告する」など、研究目的を明記します。
4. 「方法」を書く
■ 事例紹介
入院時から実践・介入をするまでの経過を時系列で整理します。
できるだけ数値で示せるデータや測定可能なデータ(例:NRS、SpO₂など)を用い、客観的に示します。
×「穏やかな表情になった」
○「『痛みは前よりだいぶまし』と本人が話した」
■ 実践・介入
どのようなケアを行い、どう変化したかを具体的に記述します。
「次に同様の患者が来たらどう実践すべきか」が分かる内容を目指します。
■ 倫理的配慮
患者へ説明し、同意(インフォームドコンセント)を得る
個人が特定されないように配慮する(例:年代、在院日数など)
院外発表時は倫理委員会の承認を受ける
5. 「結果」を書く
実践・介入を通じてどのような変化が見られたかを事実に基づいて記述します。できる限り測定可能な指標で示しましょう。
疼痛の変化
呼吸状態の変化
ADLの改善
睡眠の質の変化 など
経過を表でまとめると、変化が一目でわかります。
時系列で視点ごとに整理するのがおすすめです。
結果の内容と「はじめに」で示した目的に一貫性を持たせましょう。ここがずれないように注意しましょう!
6. 「考察」を書く
「結果」は事実・データ事実を書くことに対して、「考察」は著者の考えや主張を書く部分です。「事実」と「考え」が混同しないように注意しましょう。
なぜうまくいったのか/うまくいかなかったのか
文献を引用して根拠づける
実践への示唆(どんな教訓が得られたか)
研究の限界(一般化は難しいこと)
今後の課題
などを書いていきましょう。
まとめ
事例研究は、日々の看護を単なる経験で終わらせず、根拠をもった知識として共有できる形にする大切な手法です。
あなたの経験は、必ず誰かの看護実践に役立ちます。一つひとつ丁寧に言語化し、研究として形にしていきましょう!